ピッチャー・キラー

全国編



程なく戻ってきた屑桐と魁は、とりあえず十二支の部員に質問すべく、ロビーの方に足を運んだ。

もとから口数の少ない二人は、沈黙を保ちながら並んで歩く。
そんな空気の中、ふと屑桐は口を開いた。

「しかし貴様も物好きだな打たれた相手を気にするなど。」

冷たい口調の中に、やや牽制するような空気を感じ、魁は苦笑する。
彼らしい物言いだなと思いながら答えた。

「打たれた…か。
 どちらかというと向き合ったという感じではないか?」

「……。」

「そなたほどの投手がそれを感じていないとは思えぬがな、屑桐殿。」

「…ちっ…。」



言葉を誤魔化さずに真っ直ぐに返してくる相手に、分が悪いと感じたのか、屑桐は口を閉ざした。
その様子に屑桐の子供っぽさを感じて魁はまた苦笑した。


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「ああ、虎鉄殿、少し時間をもらいたいのだが。」

「N?あれ、村中サンに…屑桐サン。あんたも帰ってきてたんですKaい?」

「ああ、たった今だ。」

ロビーに入ると、都合のいいことに虎鉄大河がいた。
十二支のなかでは、最も天国とよく話しているのを見かける(ついでに嫉妬もよく受けている)男だ。

「De?オレに何か?」

「ああ…猿野殿のことで、少し。」


「猿野のこと…ですKa?」
また何かやらかしたのか、と虎鉄の顔は面倒見のいい心配性の先輩の顔になる。


「いや、別に問題を起こしたわけではない。
 ただ少し気になることがあってな。」

「…お前は猿野とある程度親しいようだからな。」



「え、いやそれほどでも…。」

少し照れたように笑う虎鉄に、二人の嫉妬心が一瞬頭をもたげたが、
とりあえず質問が先決だった。

「聞いても構わんな。」
「あ、Haい。」
若干冷えた空気を流石に読んだのか、虎鉄は姿勢をただした。


「それで、猿野がどうかしたんですKa?」

「ああ。大会が始まってから…どうも猿野殿の様子がおかしいようだが。」
「……。」

「あのやかましい猿ガキの口数が減っている。
 不審に思ってもおかしくはあるまい?」


「表情も振るわぬように見える…虎鉄殿、何か原因に心当たりはないか?」




「…Ah〜…。」

虎鉄は困ったようにバンダナで包まれた頭をかいた。

「何か知っておられるようだな?」
「話せ。」


虎鉄の反応は、明らかに何かを知っているようだった。
二人はほぼ同時に虎鉄に問い詰める。


だが、虎鉄は思ったより冷静に返した。



「…No commentです。オレから言えることじゃないですかRa。」


「……虎鉄殿。」


「心配してるのは分かります、けど…オレは話せまSeん。」


虎鉄の意志は眼に十二分に表れていた。
彼から聞き出すことはできないと、二人は同時に判断した。


「そうか、手間を取らせた。」

「いえ。オレもすみまSeん。」


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「さて、どうしたものか。」

理由を知る虎鉄にああ言われれば、動く方法はない。
だが…天国への心配は、やはり放置はできなかった。

二人が歩きながら悩んでいると、廊下の向こうから一人歩いてきた。

「…犬飼殿。」
「お前か。」


相手も二人を見ると驚いた顔をする。



「村中…さんに、屑桐…さん。」




人見知りの強そうな反応を見せたのは、十二支高校1年エースの犬飼冥だった。



                                          To be Coninued…


遅くなりました、2話目です。
思ったより長くなりそうなんで前中後編でなく数字でいきます;;

ここんとこ妄想が長編化してて…無謀なのは分かってるんですが…すみません;;
遅くなる一方で本当に申し訳ありません!!


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